歯っ欠け事件

 ワタシではありません。千代さんの歯が欠けました。


患者さんと玄関先で話していると、口元を隠しながら


「あらあら、どうも、こんにちは~」


と横をすり抜ける千代さん。いつも以上に挙動不審。どうしたのかと思ったら、


「お母さん、歯が取れちゃった。」

とニカッとして見せる千代さん。

・・・本当だ。歯が抜けている。かなり面白い顔になっている。


お友達からもらった佐倉で有名なおいしいセンベイを食べたら、以前から怪しかった前歯の横の歯が取れたらしい。


「今から診てくれるっていうから、歯医者さんに行ってくる」

と自転車で出かけた千代さん。

戻ってきた時には、ちゃんと歯が入っていました。

その夜、患者さんを終え帰宅してみると、


「ねーちゃん!また取れちゃったのよ!」

ニカッとして見せる千代さん。あれ?なんで?また面白い顔になっている。

歯医者さんでは、「今日は仮に入れておきます」とのことだったらしい。


「歯っ欠け千代子だ。」

と笑う父とワタシ。(非情な家族)

千代さんも自分で笑ってしまうほど面白い顔。というわけで家族みんなで大爆笑。


そして、父が一言。


「お母さん、歯がないとカワイイ顔だな」


・・・どんなノロケですか。歯が欠けた女房に惚れ直すマニアックな父。勝手にして下さい。


翌日、再び歯医者さんで歯を入れてもらった千代さん。

「この前歯の横の歯がないのって、笑えるよね~。なんでだろう。」

とつくづく言っております。


「この歯がないと、どんな美人でも笑える顔になると思うよ。ヤマモトヨウコとかヨシナガサユリでも、ニカッとした時、ここの歯がなかったら、笑えるよ~」


確かに。それは笑えます。